最近のナウなヤングに「レトロかわいい」と昭和の復刻商品が大人気だ。昭和研究を始めて20余年の筆者にとっても、手頃な値段で容易にかわいい昭和レトロアイテムが手に入るのは嬉しい限りである。
そんな中、2021年に誕生70周年を迎えた不二家の看板商品「ミルキー」が、当時のパッケージを復刻させ販売していると聞きつけ早速購入してきた。
ただこの復刻版ミルキー、今流行りの「レトロかわいい」とは一線を画す仕上がりになっている。かわいいではない、怖いのだ。これでは「レトロかわいい」ではなく、「レトロコワイイ」だ。
今回はそんな「レトロコワイイ」復刻版ミルキーを紹介しながら、ミルキーとそのキャラクターであるペコちゃんの歴史に迫ってみた。
そしてこの復刻版ミルキーは購入できる場所が限られているので、あわせてご紹介していこうと思う。
いざ!昭和の奥深さとレトロコワイイの世界へ!
まずは不二家「ミルキー」と「ペコちゃん」について学ぼう!
不二家「ミルキー」の歴史は?
レトロコワイイを堪能する前に、まずは簡単に「ミルキー」の歴史を振り返ってみよう。
戦後まもない昭和26年(1951)、「ミルキー」は静岡県沼津市の工場で誕生した。もともと沼津工場では戦災で焼け残った1基のボイラーを使って水飴と練乳を作っていた。それだけでは飽き足らない創業者の藤井林右衛門はこの2つを組み合わせて栄養豊富で低価格なお菓子を作れないかと思案する。そして2年あまり試行錯誤したうえで誕生したのが「ミルキー」である。
もともとは「ジョッキー」の名で不二家銀座店のみで販売していたが、練乳を使っていることから「ミルキー」と名前を改め、翌年の昭和27年(1952)には全国へと発売範囲を広げている。
昔のお菓子の歴史を紐解くと、栄養豊富で美味しいものを国民に届けたいという信念と心意気が感じられる。現代を生きる我々が手軽に美味しいものを食べられるのは先人たちの努力の賜物、感謝しかない。本当にありがたいと思っている。
なんで「ミルキー」は「ママの味」なの?
なんと言っても「ミルキー」といえばCMでもお馴染みのキャッチコピー「ミルキーはママの味」を思い浮かべる人は多いだろう。
あまり頭のよろしくない筆者は、子供の頃額面通りにこのフレーズを受け取り「ママがどんな味かわかんねーよ」と本気で思っていた。こんな事を平気で発言する不二家、ヤバいな・・・と幼心に恐怖におののき、不二家の店頭に置かれたかわいい「ペコちゃん」が悪の手先に見えたほどである。
もちろん「ママの味」というのは本物のママの味の感想ではない。
なぜ「ママの味」かというと、不二家の公式HPのQ&Aに立派な回答が掲載されていたので紹介したい。
Q・「ミルキー」の袋に「ミルキーはママの味」とありますが、どういう意味ですか?
A・ミルキーは北海道の厳選されたしぼりたてのミルクから作られた濃厚なれん乳を使って作られています。
このお母さんの愛情や母乳のなつかしさをイメージしたキャッチフレーズで、発売当時(1951年(昭和26年))から親しまれています。
引用:不二家HP Q&A
まぁそうだろう。大企業である不二家がヤバい発想をするわけがない。
ただ「ママの味」=「母乳の味」と勘違いされそうだが、「母乳の味」ではなく、お母さんの愛情や母乳の懐かしさをイメージしていることがポイントだ。あくまでもイメージ。想像力が試される商品である。
⬇「ショートケーキ」の元祖でもある不二家。会社やショートケーキの歴史も紹介しているので是非こちらもあわせてどうぞ!
「ミルキー」の顔、「ペコちゃん」の歴史と都市伝説。
ビーレジェンド ホエイプロテイン ペコちゃん ミルキー風味1kg
「ミルキー」の歴史を学んだ後は不二家の顔でもある「ペコちゃん」の歴史にも少し触れておこうと思う。
「ペコちゃん」が誕生したのは、「ミルキー」誕生の前年である昭和25年(1950)。創業者の藤井林右衛門の息子である誠司が、「ミルキー」の発売にともない母親や子どもたちに親しみを持ってもらえるキャラクターを商品につけようと「ペコちゃん」がデザインされた。
考案者である誠司の思いは大当たり、いまや「ペコちゃん」はかわいいキャラクターとして、母親や子どもたちだけでなく、老若男女に親しまれている。
そんなかわいい「ペコちゃん」には少し恐ろしい都市伝説があるをご存知だろうか。
時は戦時中、「ペコちゃん」のモデルとなった女の子はとてもお腹を空かせていた。不憫に思った女の子の母親は自分の腕を切り落として、女の子に食べさせた・・・・・・「ペコちゃん」が舌を出しているのは口の周りについた血を舐めているからである・・・
きゃぁああああああぁぁああ!!!!!お〜コワイ!
おそらく幼少の頃の筆者と同じように「ママの味」というフレーズから恐怖を感じ妄想を膨らませた人々が、こういった都市伝説を作り上げていったのではないだろうか。
ただこれはあくまでも都市伝説だ。少し前にあるテレビ番組で不二家の広報の人が「キャラのルーツは不明です」と発言したのが話題になった。
当たり前である、こんな悲しくも恐ろしいエピソードがモデルだったら切なくなってしまう。
復刻版「ミルキー」からみる本当の「ペコちゃん」の実態
ここまで長々と「ミルキー」と「ペコちゃん」の歴史を語ってきたが、人々が作り上げた「ペコちゃん」の都市伝説が怖いだけで、なんらレトロコワイイエピソードなんてない。
むしろ企業として美味しいお菓子を作り上げてくれた事に感謝しかない。
ここからはちょっとコワイイ復刻された「ミルキー」のパッケージを紹介しながら、「ペコちゃん」の実態に迫ったみたいと思う。
昭和26年当時のパッケージが復刻された「ミルキー」がレトロコワイイ
こちらが現在発売されている、当時のパッケージを復刻した「ミルキー」だ。
ちょっとこの「ペコちゃん」怖くないだろうか?次々に復刻されている昭和の商品はレトロでかわいい物が多い。そんな中お世辞にもこの「ペコちゃん」はかわいいとは言い難い。
むしろ怖い、レトロコワイイである。
現在の「ペコちゃん」と比べても違いは一目瞭然だ。大幅な整形を繰り返した現在の「ペコちゃん」は丸っこく黒目が大きく漫画顔である。色味も自然で血色が良くなっている。
かたや整形前の「ペコちゃん」はリアルな人間の感じがあり少し不気味だ。
人間は不気味ではないのに、人間に似せたキャラは不気味に感じてしまう。日本のキャラはkawaii文化に代表されるような、黒目がちで漫画っぽいものが主流だ。そのため日本人のかわいいという感覚とは少しかけ離れているのかも知れない。
断然いまの「ペコちゃん」の方がかわいいと思う。
そして最大のレトロコワイイ部分としては、この動く目である。
目がイッちゃっている・・・・その上で舌なめずりをしている様は、あの都市伝説がシックリくるほど。
そしてパッケージの裏は同じような造りの「ポコちゃん」があしらわれている。
ちなみに「ポコちゃん」はミルキーが発売された昭和26年(1951)に、「ペコちゃん」のボーイフレンドとして誕生したキャラである。
ヤバい・・・・この2人が玄関を開けて立っていたら、色々覚悟してしまう。対峙した瞬間、脳裏には今までの思い出が走馬灯のように駆けめぐること必至である。
パクリ?「ペコちゃん」の実態。
ちょっとコワイイ昭和の「ペコちゃん」。このリアルな出で立ちは戦後という時代背景からも、アメリカの影響を受けていると思われる。
”影響を受けている”というよりもアメリカのキャラをそのままパクっているのではないかという疑惑が持ち上がっている。
実はこのコワイイ「ペコちゃん」、アメリカのゼネラルフーズ社のオレンジジュース「バーズアイ」のキャラクターの「メリーちゃん」と瓜二つなのである。
「メリーちゃん」に関しては当時のポスターがオークションサイトで確認できるので確かめてみてほしい。
・・・恐らくパクリだろう・・・ペコちゃんの都市伝説よりもパクリの現実が怖い・・・
ただ、上記でも書いたように、不二家の広報は「キャラのルーツは不明です。」と言っていることもあり、一応真相は藪の中である。
まぁ、昭和の時代は往々にして日本でもパクリが存在していたのである。ただ、始めはパクリでもそこから進化し続け、唯一無二の存在になればいいのではないか?
考えてみれば日本は開国した明治時代から、西洋の真似をしてきたではないか・・・西洋料理をアレンジした洋食なんかも元々はパクリから始まったようなものだ。
いまや「ペコちゃん」もすっかり日本のkawaiiキャラの絵柄になっている。そして「ミルキー」を知らない日本人はいないのではないかと思うほど定番のお菓子に成長している。
もうそれでいいではないか・・・・
それに「レトロかわいい」だけで終わらない、昭和の奥深さと怖さを垣間見ることができる「ミルキー」はそれだけでも面白い存在である。
皆様も「ペコちゃん」を通じて、かわいいだけの昭和レトロじゃない、少し怖い昭和を楽しんでみてはいかががだろうか?
復刻版「ミルキー」が買える場所。
最後に復刻版「ミルキー」が購入できる場所をお伝えしておこう。この復刻版「ミルキー」コンビニやスーパー、不二家各店舗では購入できないので注意が必要だ。
購入できる場所は西洋菓子舗不二家という普通の不二家よりも、少し高級な店舗でのみ販売している。
店舗がある場所もあわせてお伝えしよう。
北海道 | ・丸井今井札幌本店 |
東京 | ・銀座三越店 ・日本橋三越本店 |
愛知県 | ・名古屋栄三越店 |
京都 | ・ジェーアール京都伊勢丹店 |
福岡 | ・岩田屋本店 |
購入できる店舗が、5都道府県・6店舗しかないため注意が必要である。
調べる限りでは通販などはしていないようだ。
「ペコちゃん」と「ポコちゃん」は怖いが、パッケージに書かれた「不二家のミルキー」のフォントは昭和レトロかわいい。
絵は怖いが箱についたマスコットのこけしを模した「ペコちゃん」はかわいい。
ちなみに中に入っているのは普通の「ミルキー」。こちらは誕生当時の復刻ではないのでご注意を!
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